ER動物救急センター

症例紹介:大動脈血栓症の緊急手術


7才 猫

6月18日
大動脈血栓症が重篤で緊急紹介:急性腎不全、高K血症、ミオグロビン尿等。血栓による多臓器損傷、特に筋崩壊所見と肺水腫所見が顕著に認められました。
飼い主様には手術で血栓をとることでの治療期待と麻酔導入時及び手術中にも亡くなる可能性が高くあることをご説明。一方、内科治療(tPA)効果は血栓が大きく期待できなく内科治療では、1日持たない状態であるとお話した。
そのような大変厳しい状況下でも、可能な限りの処置と可能性にかけて手術をご希望になり 19:12~手術を開始し20:57終了。

血栓は分岐部より頭側に約3cm大の巨大かつ強固な塊で大動脈への切開は2ヶ所行い全血栓を除去。
術前より尿量は乏しく術中よりメシル酸ナファモスタット(体外循環に使用時の抗凝固作用量)を使用し、利尿剤とドブタミンを使用した。
覚醒は比較的順調だったが術後5時間が経過し状態が急変し心拍数の低下、後弓反張を確認した直後に心停止。1:02死亡を確認。

血栓除去手術は手術難易度は症例経験数が増えるに連れ1時間30分程度と麻酔リスクを考慮しても低くなっている。
とにかく早期に、可能なら発症から2-3時間以内に手術を行なってやりたい症例である。


大動脈血栓症の緊急手術

6才 雑種猫

4月10日
大きな血栓のため、大動脈2か所を切開し血栓除去

大動脈血栓症の緊急手術

縫合後リークのないのを確認しているところ

大動脈血栓症の緊急手術

血栓除去後の血流の回復した両後肢

大動脈血栓症の緊急手術

5月10日
再診時 とても元気に来院 両後肢に壊死はなく血色良好な状態
神経機能の回復は遅いが痛覚の改善がみられ始めた。猫は虚血による末梢神経障害にはかなり強く早期の血流回復なら数カ月の時間がかかっても回復することもある。脊髄の虚血には弱いのでどこの血管がどれだけの時間詰まっていたかが今後を左右する。仮に1年後でもゆっくり機能回復が戻ってきたならばそれは素晴らしいこと。
がんばって!