症例紹介

CASE STUDY

尿管結石の猫の1例

動物種:猫  年齢:7歳齢
性別:雌  体重:3.4kg

猫の尿管結石は近年急激に増えている疾患で、当施設は救急センターという特性上、診察する機会が特に多い 。臨床徴候としては腎パネル上昇による嘔吐や食欲不振が一般的であるが、慢性腎不全と同じであるため診断には注意が必要である。
最終的には超音波検査やレントゲン検査、CT検査により尿管内の結石を確認することで診断するが、結石が小さく見つけることが難しい場合は、超音波検査により腎盂、近位尿管の拡張を確認することで、尿管結石の存在を強く疑う。
治療は結石の除去が第1選択であるが、腎結石が多数存在する場合は、尿管結石を除去しても術後すぐに腎結石が尿管内に流れ閉塞に至ってしまうことがあり、悩ませる 。腎結石が多数存在する場合は、近位尿管と膀胱を吻合する尿管膀胱新吻合術を適応することによって、流れてしまった腎結石が尿管に詰まることなく直接膀胱に流れるようにすることができる。実際適応した症例の概要を紹介する。

活動性の低下と食欲不振を主訴に、ホームドクターを受診。諸検査の結果、右尿管結石による尿閉が疑われたため、本院を紹介来院した。

診断・治療

血液検査では腎パネルの上昇が認められ (BUN120mg/dl, Crea8.9mg/dl)、超音波検査では腎結石が多数存在、また右腎盂尿管移行部から2-3cmほど遠位に直径2mmの結石が存在し、腎盂尿管の拡張が認められた。
このため、尿管結石摘出およびその尿管切開部を利用し、膀胱と吻合することとした。
結石が存在する近位尿管は切開し結石摘出後その切開部をさらに切開し10mm程度に拡張した。 膀胱も尖部やや右側に同じ大きさの切開を行った。これらの切開部同士を6-0ポリジオキサノン縫合糸により吻合した。術後、尿道カテーテルを確実に膀胱内に収まるよう設置した。

尿管切開部と膀胱切開部の頭尾側にそれぞれ1糸縫合糸をかけた状態。ガイドとして18G留置針の外套を用いている。
尿管一膀胱吻合後。

1週間入院下での経過観察を実施したが、血液検査上、腎パネルは基準値内になり尿量も正常だったため尿道カテーテルを抜去し退院とした。その後の経過観察で軽度の腎盂拡張が認められたものの腎パネルは基準値内だった。

猫の尿管閉塞は、閉塞期間が長くなればなるほど腎機能の回復率が低くなるため、速やかに対応する必要がある。本症例で実施した尿管膀胱新吻合は腎結石がある場合も適応しやすいが、近年報告された方法であり多くの報告があるわけではないため、長期的な合併症に関しては経過観察が必要である。当施設としては多数の症例を長期的に追って報告したいと考えている。

執筆者 福井 翔
ライフメイトグループ 統括外科部長