犬のダイエット方法は?食事や運動方法まとめ

犬 病気9
監修者:藤原 光宏
所属:ふじわら動物病院

病気だけをみるのではなく、動物の体の状態を総合的に考えて、動物の体に優しい治療を心掛け、現代医療、西洋医学のみならず、漢方薬や鍼灸治療などの東洋医学やホモトキシコロジー、オゾン療法なども取り入れた統合医療をおこなっています。 また、終末期医療、終末期ケアにも力を入れています。

人間も、健康診断で肥満を診断されると、さまざまな病気の原因となるので、病院で指導を受けますよね。犬も同じで、肥満はさまざまな病気の原因となってしまうことがあります。

しつけのためにおやつを乱用してしまった…
可愛くおねだりされるからついご飯をたくさんあげちゃった…
家族がそれぞれおやつをあげるから、1日にどのくらい食べさせているかわからない…

などの原因でおやつやご飯を食べさせすぎてしまって、気がついたら標準体重を大きく上回ってしまった、ということも結構あると思います。

もちろん、毎日適切な量の散歩や運動をすることも大切ですが、犬の肥満予防・対策は、食事を見直すところから始めるのがポイントです。

犬は、「これ以上食べたら太るから、今日はもうやめとこう」なんて思わないので、犬の肥満のほとんどは飼い主の責任です。

体重50kgの人間にとってはちょっとした量のおやつに思えても、体重5kgの犬にとっては、人間が思う10倍の量があるということを忘れないようにしましょう。

特に小型犬は膝や骨盤、心臓への負担が大きくなってしまうので、注意が必要となります。

この記事では、犬のダイエット方法について、食事や運動、生活習慣などをまとめましたので参考にしてみてくださいね。

なぜダイエットが必要なの?病気のリスクがある?

子犬6

「ふくふくに太った犬も可愛いじゃない」と思われる方もいると思いますが、肥満は、犬の健康にとってはいいことではありません。

愛犬には、健康で長生きしてほしいですよね。愛犬が肥満かどうかを調べる方法や、肥満になってしまうとどう良くないのかをご紹介します。

肥満かどうかをチェックする方法

まず、体重をチェックします。犬種、体格に対して適切な体重であるかどうかの確認です。

ご自宅で計測する場合には、犬を抱っこして体重を計り、飼い主さんの体重を引いた重さが、犬の体重となります。次に、肋骨、腹部、体型を見てチェックします。肋骨、腹部は触って確認し、体型は、犬を横と上から見た時のシルエットで確認します。

理想的な体型の場合、肋骨は薄い脂肪に覆われていて、肋骨を触ることができます。腹部も、薄い脂肪に覆われていて、触れたときに骨格を確認できます。

上から見たときのシルエットは、腰に適度なくびれがあり、横から見たときは、腹部が凹んでいる状態です。

肥満になるとどうシルエットが変わる?

肥満になると、脂肪が分厚くなり肋骨や腹部の骨格を触って確認することが難しくなります。かろうじて触ることができるか、触って確認することができない状態です。

上から見たときのシルエットは、くびれがなく寸胴体型になっていたり、横に膨らんだ体型になっていたりします。横から見たときには、腹部の凹みがない、もしくは張り出して下がってきていると、肥満と判断されます。

では次に、肥満が原因で犬の体に起こってしまうことをご説明しますね。

足腰への負担

人間も、一気に体重が増えると足腰などの関節に負担がかかってしまいますよね。犬も同じで、足腰に負担がかかり、関節炎や椎間板ヘルニアなどのリスクが大きくなります。

また、捻挫などの怪我もしやすくなってしまうので、注意が必要です。特に、胴が長くて足の短い犬種の子は、太った時の足腰への負担が大きいので気をつけてください。

糖尿病のリスク

人間だけでなく、犬も糖尿病になることがあります。糖尿病は、インスリンというホルモンの量が不足したり、働きが悪くなったりすることが原因で、高血糖の状態が続いてしまう病気です。

急に血糖値が上がる高GI値の食事や、脂肪や炭水化物の多い食事が原因で肥満になってしまうと、糖尿病を発症しやすくなります

肥満が原因でなることが多いですが、トイプードル、ダックスフンド、ゴールデンレトリバーなどは遺伝的に発症しやすいと言われています。また、男の子よりも女の子の方が多く発症するとも言われます。

糖尿病になると、多飲多尿、体重減少、嘔吐、下痢、神経障害、昏睡などの症状を引き起こし、最悪の場合は死に至ります。

心臓への負担

体が大きくなればなるほど、多くの血液を必要とします。そして、血液を全身に循環させているのは、心臓です。

そのため、過剰に心臓を働かせることになってしまい、心臓に負担がかかってしまうのです。

太ったらすぐに心臓が悪くなる!ということではありません。ですが、その状態が続くと心臓への負担も続くことになり、心臓病などの原因になってしまうことが考えられます。

呼吸器への負担

太ってしまうと、気道が圧迫されます。そのため、呼吸がしにくくなり苦しそうな呼吸をするようになります。咳が出る子もいるようです。

深い呼吸をすることができず、浅い呼吸を繰り返すので、ハァハァと苦しそうな呼吸になってしまうこともあります。

もともと呼吸器官が弱っている子などは症状が悪化することもあるので注意が必要です。

ふじわら動物病院 藤原 光宏さん
犬も人と同じように肥満になるといろんな病気になります。犬が自分で食事を作って、コンビニにおやつを買いに行って食べているなら、犬に指導をしますが、犬の食事やおやつは人からしかもらうことはありません。犬を肥満にするのは飼い主さんになりますので、飼い主さんとしての自覚と責任を持ってしっかりと管理してあげましょう。

犬のダイエット方法を5つご紹介!

1.食事の場所を決める

犬

食事の場所を決め、決めた場所以外で食事を与えないようにしましょう。どこでも食べる習慣がつくと、犬は甘えれば餌がすぐに出てくると思ってしまいます。甘やかさず、食事の量や時間をコントロールしましょう。

また、手で一粒ずつ与えていくと時間をかけて食事ができるので、少量で満腹に感じてくれますよ。

2.食事は時間を決めて1日5回

犬

ダイエット中の食事は1日に与える量を決め、それを3時間おきに5回に分けてあげていくのがオススメです。

犬のダイエットは空腹感を紛らわせることが大切です。空腹感が続くと、内蔵の活動が低下する上、基礎代謝も下がってしまい痩せにくくなります。

満腹とまではいかないにしても、犬に空腹だと感じさせないようにコントロールしましょう。「少量をゆっくり何回も食べる」のがダイエット成功のコツです。

3.フードの工夫

犬

ダイエット中は特に、総合栄養食を食べさせてあげるのがおすすめです。どういうフードがいいのかわからないという方も多いと思いますので、選ぶ際のポイントをご紹介します。

低脂肪

脂肪分は、体に必要な栄養素なので、まったく摂ってはいけないということではありません。ですが、摂りすぎると肥満の原因となってしまいます。

ダイエットをしている子には、低脂肪のものを選んであげましょう。

高タンパク質

ダイエットにはタンパク質が必要です。人間も、ダイエットをするときにプロテインを摂取することがありますよね。プロテインとは、そのまま、タンパク質という意味の英語です。

タンパク質は筋肉を保持するのに必要な栄養素です。筋肉は、脂肪を燃焼する働きがあるので、タンパク質を補うことでダイエットに有効だと考えられています。

吸収しやすい、質のいいタンパク質が多く含まれているものがおすすめです。低脂肪かつ高タンパク質な食品としては、

・鶏ささみ
・鶏むね
・鮭
・たら
・ほっけ
・ヨーグルト
などがあります。原材料に低脂肪で高タンパク質な素材が使用されているものを選ぶようにしましょう。

低糖質

穀物などの炭水化物は、体内で糖質に変化します。また、良質なタンパク質からも糖質を作り出すことが可能です。

糖質も、体にとって必要な栄養素ですが、タンパク質をしっかり与えていれば必要な糖質量はほぼクリアできます。なので、穀物は入っていないもの、もしくは低GI値のものを選ぶようにしましょう。

GI値とは、食後の血糖値上昇を示す数値を表していて、高GI値の食品は肥満の原因となってしまいます。ドッグフードによく使用されている低GI値の食品は、サツマイモやひよこ豆などです。

ドライフード

食べ物を丸呑みするのは、ダイエットにも歯にも良くありません。柔らかいフードは噛まずに丸呑みしてしまうので、噛み応えのあるフードがおすすめです。

小型犬の場合は粒が小さめで、噛みやすい形状をしていて、ホロっと崩れやすいものがおすすめです。

おからなどをあげる

おからは、食物繊維やタンパク質などを多く含み、犬が食べても大丈夫な食材です。犬用のおからも売られています。

おからとは、豆腐を作る際、豆乳を絞った後に残る大豆の搾りかすです。卯の花、雪花菜、きらずとも呼ばれています。

おからは腹持ちがよく、少量で満足感を与えてくれる食材でもあります。フードの量を減らして、おからをトッピングしてあげると、満腹感を損なわずにダイエット向きの食事にすることができます

愛犬に与える場合は、体重などによって計算される1日に必要な摂取カロリー量の10%までに抑えるようにしてください。一度に大量に与えると消化不良や下痢の原因となってしまうので、注意が必要です。

また、大豆アレルギーの子には与えないように気をつけください。

おから以外にも、必要な栄養素を与えられる、犬が食べてもいい野菜などを茹でて混ぜてあげるのもいいですよ。

4.おやつは控える、もしくは量を減らす

犬

犬の肥満を引き起こす一番の原因はおやつです。ダイエット中は、できるだけおやつは与えないようにしましょう。

どうしても与えたい場合は、他の食事量を減らして、おやつを与えるなど、1日に与える餌の量をコントロールし、一日に与える分量は守るようにしてくださいね。

5.運動量を増やす

犬

食べる量と運動量が釣り合わないと、当然太ってしまいます。肥満の犬は体についた脂肪をエネルギーとして消費するために運動が必要になります。

ただ、急に激しい運動をすると足や背骨、心臓に負担がかかってしまうので、まずは歩く距離を少しずつ長くすることから始めてください。散歩以外でも、家の中でボール遊びをしたり、タオルの引っ張り合いをしたり、とにかく体を動かすことを心掛けてくださいね。

ふじわら動物病院 藤原 光宏さん
肥満の状態で無理な運動をすると足腰を痛めたり、心臓や肺に負担をかけたりするので、肥満の状態のままで過度な運動をするのは止めましょう。しっかりと食事管理をしながら無理のない運動を増やして体重が落ちてからしっかりとした運動をして筋肉をつけるようにして肥満の再発予防をしていきましょう。

ダイエット向けのドッグフードってどんなもの?

犬 ご飯

特徴

ダイエットドッグフードとは、愛犬の体重が増えすぎてダイエットさせてあげたい時に食べさせるドッグフードのこと。

カロリーをカットしながらも必要な栄養素を摂取できるように調整されているので、通常のドッグフードの給餌量を減らしてダイエットするよりも低リスク・効率的にダイエットできます。

ダイエットドッグフードの主な特徴は、「高タンパク」「低脂肪」「低カロリー」になっていることです。

中には、腹持ちや満足感を自足させるために食物繊維を含んでいるものや脂肪の燃焼を助ける成分が配合されているものもあります。

ダイエットフードの種類

種類

減量用
体重管理用
適正体重維持用

ダイエット用のフードには「減量用」「体重管理用」「適正体重を維持する用」の3種類があります。愛犬のダイエット対策したい場合は、ドッグフードのパッケージにこれらが明記されているものを選ぶようにしましょう。

それぞれ詳しく説明していきますね。

減量用・体重管理用

「減量用」「体重管理用」とメーカーによって表記は違いますが、この2種類は体重を減らす用途で使用されるフードです。

カロリーを15%前後カットするために脂肪分を減らしていますが、炭水化物やが食物繊維も多く含まれているので給餌量を極端に減らすことなくダイエットできるフードになっています。

適正体重を維持する用

適正体重維持用は、低脂肪・低カロリーで必要な栄養をバランスよく摂取できるフードになっています。普通のドッグフードと比べると、10%ほどカロリーがカットされているものが多いですね。

ダイエット用ドッグフードのメリットとデメリット

メリット

ダイエットドッグフードのメリット
  • 少量で満腹感が得られる

ダイエットフードには食物繊維が豊富に含まれており少量で満腹感を感じることができるので、食べ過ぎを防止することができます。

ただ、ダイエットフードに頼らなくても、プレミアムフードを適正量与えていれば適正体重を維持することは可能ですよ。まずは、しっかり運動させるなど、普段の生活習慣を見直すことから始めてみてくださいね。

デメリット

ダイエットフードのデメリット
  • 穀物が多く使用されている

ダイエットフードの多くは、穀物を多く使用することでカロリーを下げています。

穀物が多用されているフードを食べ続けると十分な量の栄養素を吸収することができないので、栄養失調になることもあります。

また、動物性タンパク質も十分な量を摂取できないので、健康的な筋肉維持もできなくなり代謝も下がってしまいます。エネルギーを最も多く消費するのは筋肉なので、筋肉量が低下すると余分なエネルギーが脂肪になり、太る原因になるのです。

注意点

ダイエット用のフードを使用していても、普段通りの量を与えていたのではダイエットにはあまり繋がりません。給餌量を少しづつ減らしながら適切な食事量に調整してあげることが大切ですよ。

いきなり食事量を減らしたりするとストレスになるので、毎食少しづつ減らしていくようにしてくださいね。

ダイエット用ドッグフードの選び方は?

犬 素材

肥満になりやすい原材料

肥満になりやすい原材料

炭水化物
穀物

多くのドッグフードに含まれている「炭水化物」と「穀物」は愛犬の肥満を進行させる原因になります。炭水化物はほとんどのドッグフードに含まれていますが、「穀物」は不使用のドッグフードが存在します。

「穀物」は人間にとって大切な栄養の1つですが、犬にとっては栄養価値が低くて消化にもよくありません。ドッグフードに含まれる穀物は「かさ増し」が目的であることが多いです。

そこで愛犬の肥満対策をお考えであれば、これらの原材料が入っていないものを選ぶようにしましょう。

ダイエットフードを選ぶポイント

ポイント

高タンパク・低炭水化物
穀類不使用
無添加
鶏肉、シカ肉、羊肉が主原料

ダイエット用フードを選ぶポイントは、「高タンパク・低炭水化物」「穀類不使用」「無添加」の3点です。

高タンパク・低炭水化物

犬が肥満になる原因の多くは、炭水化物の過剰摂取によるものです。

高タンパク・低炭水化物のフードを選ぶことで、肉食動物である犬が消化を苦手としている炭水化物の摂取量を減らすことができます。

穀物不使用

上記でも説明している通り、高タンパク・低炭水化物であっても、穀物が使用されているフードはダイエットには不向きです。穀物には糖質が含まれているので、脂肪の原因になってしまいます。

価格は高くなりますが、「トウモロコシ」「小麦」「米」などの穀類が一切使用されていないグレインフリーのドッグフードを選ぶようにしてくださいね。

無添加

添加物は、犬の食いつきを良くしたり腐敗から守るために使用されることが多い成分です。

アレルギーの原因になるものや発がん性が認められているものなど、人間には使用が禁止されているものも多いので、無添加のフードを選ぶようにしてください。

鶏肉、シカ肉、羊肉が主原料

ドッグフードの袋にある原材料表では一番最初に書かれている原料が主原料なので、主原料が「肉類」になっているものがおすすめです。

中でもカロリーが低い「鶏肉」や「シカ肉」や「羊肉」を使用していると良いでしょう。「ミートミール」や「ミールパウダー」を使用しているものは健康にあまり良くありませんので注意してください。

愛犬のダイエット、これに注意しよう!

犬

急激なダイエットをしない

極端にフードの量を減らしたり、運動量を増やしたりしてしまうと、体に良くありません。1日に与えるドッグフードの量は、現在の体重と標準体重を参考に設定します。

たとえば、標準体重が5kgで、現在の体重が9kgの場合、ドッグフードの量を少しずつ減らしていって、最終的には標準体重5kgの子が食べる量のご飯にしていきます。

ただ、9kgの犬にとっての1kg減量は、90kgの人間の10kg減量と同じです。そう聞くと、かなり大きな減量であることがわかりますよ。

病院で、「どのくらいの期間で何キロくらい痩せればいいか」「ご飯の量はどうすればいいか」と相談するのもおすすめです。

運動量を減らさない

太ってしまうと犬は運動をしたがらなくなりますが、健康的なダイエットのためには運動も必要です。

散歩を毎日すること以外に、室内でおもちゃを使って遊んだり、犬用の筋トレをしてあげたりすることが大切です。

ただ、運動量も、急激に増やすのはおすすめしません

肥満ではなく病気かもしれないケース

肥満以外に、毛が脱ける、水をたくさん飲む、おしっこの回数や量が多い、お腹が垂れ下がるなど、愛犬に異変を感じた場合は獣医師に診てもらいましょう。ホルモン異常などの病気の可能性もあるので注意が必要です。

また、愛犬が極度に肥満の場合は、ドッグトレーナーや獣医師に相談することも時には必要です。期間と減量したい体重の目標を立てて、時間をかけて体重を減らすようにしてくださいね。

定期健診とモチベーション管理

獣医師による定期的な健康チェックを受けることで、犬の体重や健康状態を把握しておきましょう。ごはんの量の調整など獣医師と相談するのもおすすめです。

また、ダイエットは長期的に行うものであるため、愛犬のモチベーションを保つことが重要です。犬が成功したときにはほめたりご褒美をあげたり、工夫をしてみましょう。

ふじわら動物病院 藤原 光宏さん
中年から高齢になって肥満になった場合は、ホルモンの病気、糖尿病などの病気によって肥満になることもあるので注意しましょう。病気による肥満はいくらダイエットしても運動しても痩せません。ダイエットをする前に動物病院で診てもらって病気ではないことを確認してからダイエットするようにしましょう。

犬のダイエットは飼い主さん次第

犬 散歩

犬の肥満は、食事や運動を管理する飼い主さんにも大きな責任があります。自分自身がまずは気持ちを引き締めて、甘やかさないようにし、犬と一緒に無理のないダイエットに挑戦してみてください。

ここで紹介したようなダイエットフードを活用すれば肥満を解消することもできますが、普段から肥満に気をつけてあげることが何より大切です。消費カロリーを高めてあげることが理想ですよね。

運動をすると新陳代謝がよくなり、太りにくい体質になるともいわれていますよ。愛犬の長生きのために、飼い主さんはドッグフード選びや運動量の確保にこだわってあげてくださいね。

そして愛犬と一緒に楽しいドッグライフを楽しみましょう!

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