犬に寄生するダニの種類や症状は?ダニそれぞれの原因や対策まとめ

犬 ダニ1
愛玩動物看護師
監修者:渡邉鈴子

栃木県生まれ。帝京科学大学にて4年間、動物看護学をはじめとした動物関連の科目を学び、2023年5月には愛玩動物看護師免許を取得。これまでにうさぎや猫の飼育経験あり。現在では、ペット栄養管理士の資格取得に向けて勉強中。

目には見えないほど小さいダニですが、体に寄生すると我慢できないほどのかゆみを伴ったり皮膚炎を起こしてしまいます。

犬も同様に、ダニによって皮膚炎が引き起こされるのはもちろん、ダニを媒介とした感染症になるリスクを持っています。

身近に潜んでいるマダニを始め、犬に寄生する代表的な種類とその特徴的な症状などをまとめました。

犬に寄生するダニの種類は?注意したい5種類を紹介

犬 ダニ2

犬に寄生するダニの種類

マダニ
ニキビダニ
ヒゼンダニ
ツメダニ
耳ダニ(ミミヒゼンダニ)

ダニの中でも特に犬で注意が必要な種類は、「マダニ」「ニキビダニ」「ヒゼンダニ」「ツメダニ」です。「マダニ」は体が大きく、犬にとって危険なダニとして知られています。

「ニキビダニ」は、毛根を包んでいる「毛包」にひそむダニで、「毛包虫」とも呼ばれています。「ヒゼンダニ」は、強いかゆみを引き起こすダニです。

ヒゼンダニの一種である「ミミヒゼンダニ」が、通称耳ダニと呼ばれるダニです。

犬に寄生する「マダニ」、症状・取り方・対策

犬 ダニ3

マダニの症状

マダニが犬につくと、まずかゆみが引き起こされます。マダニは、吸血後の体重が吸血前の200倍になるほど血を吸うこともあり、犬にマダニが大量に寄生してしまうと貧血症状を起こします。

マダニは吸血の際に大量の水分を唾液として吐き戻すので、「アレルギー性皮膚炎」になりかゆみを引き起こすこともあります。

「マダニ媒介性疾患」にも注意が必要です。貧血や発熱、食欲不振、黄疸などを示す「バベシア症」や、発熱や痙攣、歩行異常、関節炎を示す「ライム病」などの病気を媒介することがあります。

マダニの取り方

マダニを自分で取ってしまう飼い主さんもいらっしゃいますがNGです。マダニを無理に取ろうとすると皮膚に口の一部が残ってしまい、化膿などの原因になるからです。

マダニを取り除くときは専用のピンセットで慎重に除去するか、動物病院で薬剤を使用してください。

マダニの対策

マダニは草むらの中に多く潜んでいます。散歩は草むらが少ないコースをできるだけ選んでください。犬が草むらに入っていってしまった場合は、散歩後にマダニが寄生していないか全身をチェックしてくださいね。

日ごろからシャンプーやブラッシングなど、体を清潔することを習慣化しておくことが大切です。

「マダニ駆除薬」を定期的に投与するという方法もあります。

犬に寄生する「ニキビダニ」の症状・駆除方法・対策

犬 ダニ6

ニキビダニの症状

ニキビダニは犬の目や口周り、前足の足先によく寄生します。

犬に寄生しているニキビダニが何らかの原因で異常増殖すると、犬に「脱毛」や「ニキビのような膿ほう」が現れ、症状が進行すると皮膚がベチョベチョと湿疹し、ただれてきます。

細菌による二次感染が起こってしまうと激しいかゆみを伴います。

発症後約1ヶ月で全身膿皮症となり、放っておくと気管支肺炎や敗血症で死にいたることもあるのですぐに病院へ行かなければなりません。

ニキビダニは他の動物種には寄生しませんので、同居猫などがいても大丈夫です。しかし、犬には感染するので注意が必要です。

甲状腺機能低下症や免疫力が低下する病気から続発することもあります。

ニキビダニの駆除方法

ニキビダニは体長0.2~0.3ミリほどの小さなダニなので、手で取ることはできません。殺ダニ剤の投与や薬浴、抗生剤の投与を並行して行い駆虫します。

症状が軽い子犬の場合でも治療には最低1ヶ月かかります。症状がひどい場合には1年前後治療を続けてなければならないこともあります。

「アトピー性皮膚炎」の併発を起こしてしまうと治療が困難なので、事前に食い止められるようにする必要があります。

ニキビダニの対策

ニキビダニが異常増殖し、発症してしまうのは遺伝的素因や免疫力の低下が原因だとされていますが、まだ十分には解明されていません。

発症している犬を繁殖犬にしないことも大切ですが、原因に関わらず日頃から十分な栄養管理と体力維持に努めることが対策につながるといえます。

犬に寄生する「ヒゼンダニ」の症状・駆除方法・対策

犬 ダニ5

ヒゼンダニの症状

ヒゼンダニはとても小さく、厄介なダニです。ヒゼンダニは皮膚の中に潜り込んでトンネルを掘ってしまうので、強いかゆみを特徴とする皮膚病である「疥癬症(かいせんしょう)」を引き起こします。

耳・肘・お腹などの毛が少ない部分に、炎症や血のかさぶたである痂皮(かひ)が現れることもあります。

ヒゼンダニの駆除方法

ヒゼンダニは顕微鏡で見ないとわからないほどの小さなダニなので手で取ることはできません。殺ダニ剤を使用してダニを除去しつつ、かゆみ止めや抗生剤の服用、薬浴を行います。

症状が軽減したように見えても再発する恐れがあるので、ヒゼンダニが死滅して完全に治るまでは、獣医師の指示どおり治療を続ける必要があります。

ヒゼンダニの対策

ヒゼンダニは伝染性が強いため、ヒゼンダニが寄生している特徴である「疥癬症」の症状が出ている動物と接触させないようにしてください。寝床やブラシ、首輪、おもちゃの共有も避けてくださいね。

ヒゼンダニは動物の体外では数日しか生きられないため、定期的に掃除を行い清潔を保つことが対策につながります。

また、疥癬症は人獣共通感染症なので人にも感染します。ペットに触れた後は手を洗うなどして感染しないように気を付けましょう。

犬に寄生する「ツメダニ」の症状・治療・対策

ツメダニの症状

ツメダニに感染している動物もしくは、その動物の被毛などに接触することで感染します。

ツメダニが寄生すると皮膚炎になり、大量のフケが出るのが特徴です。耳の後ろや尻尾の付け根あたり、背中によく見られます。

子犬の時期だと症状が重くなりやすい傾向にあります。

ツメダニの駆除方法

ダニに有効なシャンプーや内服、滴下、注射などで投薬治療を行います。

ツメダニは寄生していない状態でもおよそ10日間は生きているため、症状が直ったとしても再感染しないような環境を整えておく必要があります。

ツメダニの対策

ツメダニに感染している動物もしくは、その動物の被毛などとの接触が原因になるため、散歩時の接触に注意してください。

散歩後のケアを含め、日ごろから愛犬の体の様子をチェックしておきましょう。

犬に寄生する「耳ダニ」の症状・治療・対策

犬 ダ二4

耳ダニの症状

耳ダニはヒゼンダニの一種なので、激しいかゆみを伴います。もし犬が「頭を激しく振る」「後ろ足で頻繁に耳をひっかく」「地面に耳をこすりつける」といった行動をしている場合、耳ダニが原因かもしれません。

耳ダニが寄生すると耳ダニの糞によって、耳垢が「黒っぽくカサカサする」という症状もみられるようになります。放っておくと慢性の外耳炎に進行し、中耳炎などさまざまな病気を引き起こす可能性も。

耳ダニの治療

耳ダニは犬の耳垢を食べて成長するため、まずは耳の中の洗浄を行ってきれいにし、その後に殺ダニ剤を3週間投与します。

耳ダニはやっかいな寄生虫ですが、適切な期間、適切な治療を確実に行えば、完治することができますよ。

耳ダニの対策

耳ダニに感染している動物との接触は避けます。

さらに、犬が耳ダニに感染している場合、寝床やおもちゃといった周りの生活環境の中にも耳ダニの卵や幼虫がいるはずです。寝床やおもちゃの洗濯・消毒も忘れないでくださいね。

垂れ耳や耳の中に毛が密生している犬種は、シャンプー後のケアも大切です。耳ダニは水分が残っている環境を好むので、しっかり乾かして耳の周りもきれいに掃除してあげてください。

犬のダニは早期に発見して治療!

犬 ダニ7
ダニの種類によってその症状や対処方法はさまざまですが、ダニが犬の健康に大きな害があることは変わりありません。

体や耳をかゆがっている場合、犬にダニがいる可能性があるため、早めに動物病院を受診するようにしてくださいね。

特にマダニは犬だけでなく、私たち人間にも被害を及ぼす可能性があります。シャンプーやブラッシングの習慣化、投薬など寄生させない対策を徹底しましょう。

関連記事