犬のヘルニア、種類や症状、治療法、対策まとめ。手術費用は?

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愛玩動物看護師
監修者:渡邉鈴子

栃木県生まれ。帝京科学大学にて4年間、動物看護学をはじめとした動物関連の科目を学び、2023年5月には愛玩動物看護師免許を取得。これまでにうさぎや猫の飼育経験あり。現在では、ペット栄養管理士の資格取得に向けて勉強中。

ヘルニアは椎間板ヘルニアを除き、臓器の一部もしくは全てがお腹の中を保護する組織の隙間から飛び出すことで発症します。犬のヘルニアは主に5種類あり、特に2〜6歳の犬に起こりやすいトラブルの一つです。

この記事では、犬のヘルニアの種類や症状、治療法や対策についてまとめました。

犬のヘルニア、種類や症状は?

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1. 鼠径(そけい)ヘルニア

鼠径とは、太もも、もしくは足の付け根のことです。鼠径部の隙間から臓器が飛び出すことで発症します。飛び出した臓器によっては腸閉塞や排尿障害が併発し、大変危険です。先天性で起こるものもあれば事故など外傷によっておこる後天性のものもあります。

 

2. 臍(へそ)ヘルニア

へその穴に臓器が飛び出して発症し、出べその状態になるのが特徴です。大きさはくるみ大~リンゴ大ほどです。鼠径ヘルニアと同じく腸閉塞を併発する可能性があるため、すぐに獣医に見せる必要があります。鼠経ヘルニアと同様に先天性で起こることもあれば、後天性のものもあります。主に小型犬で発症しやすいです。

 

3. 会陰(えいん)ヘルニア

主に去勢をしていないオスの老犬にみられる病気です。肛門に臓器が押し出され、まわりが膨らみます。発症すると便秘や排便困難になります。膀胱が飛び出した場合には、膀胱が反転するため排尿障害になることもあります。筋力の低下によるもので、男性ホルモンが影響しているとされています。

 

4. 食道裂孔(しょくどうれっこう)ヘルニア

食道裂孔とは、血管や食道などが通過できるように横隔膜に開かれた穴です。先天的にこの穴が大きいと、胃が穴から飛び出して食道裂孔ヘルニアとなります。主な症状は、食べ物の吐き出しや胃液の逆流による食道炎などです。加齢や肥満、慢性の咳から発症することもあります。

 

5. 椎間板(ついかんばん)ヘルニア

上記4つのヘルニアと違い、椎間板ヘルニアは脊椎(せきつい)で発症します。椎間板とは脊椎で運動による衝撃を和らげるクッションの役割を果たすパーツで、椎間板が激しい運動などで損傷すると、椎間板から髓核(ずいかく)と呼ばれる物質が飛び出して神経を圧迫し、痛みを引き起こすのです。

愛玩動物看護師 渡邉鈴子さん
椎間板ヘルニアは軟骨異栄養性犬種がかかりやすい病気です。特にダックスフント、ペキニーズ、フレンチ・ブルドッグ、ビーグルに好発します。

 

犬のヘルニア、治療法は?

鼠径ヘルニア

軽度の鼠径ヘルニアは経過観察され、症状が重くなりそうな場合は外科手術が施されます。妊娠や過度の肥満はヘルニアを拡大させる可能性があるため、外科手術がとられるケースが多いです。腸や子宮、膀胱といったお腹のなかの臓器がヘルニア内にはまり込んでいる場合も外科手術が必要となります。

臍ヘルニア

臍ヘルニアも経過観察が基本ですが、穴が閉じない場合は外科手術を施します。臍ヘルニアは先天性の場合が多く、生後一年以内に発症する場合が多いです。経過観察するうちに自然に治るケースもありますが、腸閉塞のしめつけが生じた場合は緊急手術が必要となります。

会陰ヘルニア

治療は飛び出した臓器を元の状態に戻し、筋肉の隙間を塞ぐ外科手術を行います。去勢していないオス犬の場合は再発しやすいため、会陰ヘルニアの治療と同時に去勢手術を行うこともあります。

 

食道裂孔ヘルニア

食道裂孔ヘルニアも基本は外科手術で治療します。出てしまった胃を腹腔内に引き戻し、開大している食道裂孔を縮小させ、逆流防止手術をします。最近では胸部・腹部など患部に近い場所に穴を開けて、そこから内視鏡を入れて手術を行う「ニッセン法」で行われることが多いようです。

 

椎間板ヘルニア

椎間板ヘルニアは、症状の重さ別に5つのグレードに分類されます。麻痺、後ろ足の力が弱くなり、歩くとふらふらする症状のグレード2までなら内科治療です。後ろ足が動かなくなり前足だけで歩くようになるグレード3以降は外科治療を選択することが一般的です。

 

犬のヘルニア、手術費用は?

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一般的な費用をご紹介しますが、病院や犬種、症状の進み具合によって大きく異なりますので、いくつかの病院で費用を聞いてみるのがおすすめです。

 

鼠径ヘルニア/臍ヘルニア

検査費と入院費込みで3万〜5万円程です。鼠径ヘルニアは開腹を伴うので高額で、4万〜10万円ほどです。

 

会陰ヘルニア

外科手術で、手術費用は7万円程です。

 

食道裂孔ヘルニア

外科手術で、手術費用は4万円程です。

 

椎間板ヘルニア

内科治療の場合、費用はほとんどかかりません。獣医によってはレーザー治療を施す場合もありますが、一回にかかる費用は1,000円程度です。一方、外科手術が必要となった場合の費用は20万〜35万円程度と高額になります。

 

犬のヘルニア、対策は?

鼠径ヘルニアと臍ヘルニアには事前の対策がありません。発症すると足の付け根に小さな膨らみができるので、頻繁に触れていれば早期発見することも可能です。

会陰ヘルニアは、若いうちに去勢手術を施すのが有効です。老犬になって会陰ヘルニアにかかると、体力的に手術が難しくなるケースもあります。

食道裂孔ヘルニアは先天性のものなので事前対策はありません。なかなか発見されにくい症状でもあるので、頻繁に嘔吐などの症状があれば早めに獣医に見せるようにしましょう。

椎間板ヘルニアは先天性のもの以外は肥満が原因となる場合も多いです。過度の運動をさけ、肥満に注意することが対策となります。

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犬を抱っこする際にやりがちな縦抱きの抱っこは犬の背中に負担をかけてしまいます。縦抱きは椎間板ヘルニアを誘発する原因にもなります。抱っこの仕方の理想は背中が地面と水平な抱っこの仕方です。

犬のヘルニアを早期発見するにはスキンシップ!

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犬のヘルニアの治療には高額な費用がかかるので、ペット保険に入っておくことをおすすめします。どのヘルニアも早期発見することで、愛犬の苦しみを軽減できるのも事実です。普段のスキンシップのなかで、愛犬に異変がないか気づいてあげることが大切です。

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