犬の生理についての正しい知識は、犬を飼っている方にもあまり知られていないといわれています。犬の生理は人間のものとは大きく異なります。
この記事では、犬の生理の周期、期間、症状や散歩時のパンツについてまとめました。メス犬を飼っている方には特につけておいて欲しい知識です。
この記事でまとめたこと
犬の生理とは

犬の生理とは、発情前期・発情期・発情後期の期間を指します。
避妊をしていない健康なメス犬に訪れるもので、「ヒート」と呼ばれることが多いですね。
ちなみに、出血を伴う生理がある哺乳類は珍しく、人間以外では高等霊長類とイヌ科ぐらいだとされていますよ。
人間の生理との違い
人間と犬では、生理の仕組みが異なります。
人間は排卵があって子供ができなかった場合に生理が来ますが、犬の生理は排卵の前に起こるという違いがあります。
また、犬の卵巣機能は寿命がくるまで働き続けるので生涯子供を生むことも可能で、閉経はない(生理は一生続く)とされています。
犬の生理はいつから始まる?周期は?期間は?

犬の生理 サイクル
- 発情前期 約8日(血中エストロゲン濃度が上昇)
- 発情期 約9日(オスを許容する期間)
- 発情休止期 約2ヶ月
- 無発情期 約4ヶ月
犬の場合、通常生後6~10か月頃から生理が始まります。ただし個体差はあり、生後1年を過ぎてからのこともあります。その後、小型犬も大型犬も年に2回という周期で生理を繰り返します。
期間としては、「発情前期」「発情期」「発情後期」の3期間を1サイクルとして、1週間から10日ほど続きます。その後、約4ヶ月の無発情期を経て再び生理が始まります。
犬の生理「発情前期」の様子・症状は?出血に注意

発情前期の注意点
- 陰部からの出血
- 尿のフェロモン
発情前期は約10日間続きます。この時期は陰部が腫れたように膨らみ、陰部からの出血が始まります。
特に小型犬に多いのですが、出血量が少なかったり自分で血をなめとったりすると、飼い主が生理に気づかないこともあります。お尻を気にして舐めているときは生理の可能性がありますので、陰部を観察し、腫れていないか確認してください。
症状は、ソワソワと落ち着きがない、オシッコの回数が増える、食欲が無くなるといったことがみられます。食欲は落ちますが無理やり食べさせるほどではありませんよ。この時期からメス犬もマーキングをするようになりますが、オシッコに含まれるフェロモンを察知してオス犬が寄ってきます。
しかし、発情前期はまだオス犬を許容する段階ではありません。メス犬が興奮しやすい時期で、オス犬がフェロモンに反応しメス犬を追い掛け回すこともありますので、お散歩の際には気をつけてくださいね。
犬の生理「発情期」の様子・症状は?オス犬に注意

発情期の注意点
- 排卵後の妊娠可能期間
- オス犬との接触
出血量が少なくなると発情期に入り、オスを許容するようになります。発情期に入って2~3日で排卵が起こり、その前後5日間が妊娠可能期間です。
中でも排卵日付近になると他のオス犬に寛容になったり、普段は嫌悪を示すメスも好意を示すといった変化が見られることがありますよ。それ以外の時はオスに対して厳しい態度を取ることの多い期間です。
また、出血が止まったからといって発情期が終わったわけではありません。望まない妊娠を避けるために最も注意が必要な時期なので、普段は屋外で飼っている場合でもこの期間は室内で飼う、他の犬が多い時間の散歩は避けるなど、オス犬と接触させない行動をとることをおすすめします。
一旦交尾体制(オス犬がメス犬の膣に性器を入れた状態)に入ると、オス犬は性器にロックを掛けるため人間の力では引き離せなくなってしまいます。無理に引き離そうとすると大怪我に繋がるので、オス犬との接触をさけることが最善策といえます。
犬の生理「発情後期」の様子・症状は?偽妊娠に注意

発情後期の注意点
- 偽妊娠
排卵されて卵子に受精する能力がなくなると発情期は終了し、発情後期となります。この時期に入ると体が通常の状態に戻っていきます。
哺乳類は妊娠が成立しなかった場合、黄体機能が低下し、黄体ホルモンと呼ばれる女性ホルモンの分泌も止まります。しかし犬の場合は、妊娠していなくても黄体ホルモンが長期に渡って分泌されるため、偽妊娠(想像妊娠)と呼ばれる状態になりやすくなります。
偽妊娠は自然と終わりますが、中には母乳が出る犬もいて、母乳を舐めて乳腺炎になることもあるので、少しでも妊娠が疑われる症状が出た場合は、動物病院に相談してくださいね。
生理中の散歩は、生理用パンツをはく?紙おむつ?メリットデメリットまとめ
初めて飼い犬に生理がきた方の多くが悩むポイントですよね。犬の生理用パンツは生理による出血でまわりを汚してしまうのを防いでくれるので、とても便利です。
うんちもしっかりキャッチしてくれる優れものですが、一方で値段が高く、歩く度にカサカサと音が鳴るために嫌がる犬もいます。
また異物や誤食癖のある犬は食べてしまったり、陰部周辺がかぶれて細菌性膀胱炎にかかってしまったりするリスクがあります。注意しながら使用してください。
愛犬とよりそう散歩の仕方についてゼロから知りたい方にはこちらの記事がおすすめです。
生理中のお手入れ、シャンプーはしてもいい?

生理中にシャンプーをしても問題はありません。
ヒート中やヒート後は体の免疫力の低下により細菌感染を起こしやすくなっているので、陰部を清潔に保ってあげてくださいね。
避妊手術について

避妊手術の費用
- 2~5万円
避妊手術の時期
- 生後7ヶ月の前後1~2ヶ月
避妊手術とは、メス犬の卵巣のみ、または子宮と卵巣を摘出することで妊娠できない体にするための処置です。
手術の時期については様々な見解がありますが、生後7ヶ月の前後1~2ヶ月ごろが最適だとされています。費用は2~5万円前後が一般的です。
避妊手術には様々なメリット・デメリットがあるので、獣医さんとしっかりと話し合い納得した上で決断することが大切ですよ。
避妊手術のメリット
メリット
- 望まない妊娠を対策できる
- メス特有の病気の対策
- 発情によるストレスの軽減
避妊手術の一番のメリットは、望まない妊娠をさせないことです。
そのほかにも、「乳腺腫瘍」「子宮蓄膿症」「卵巣腫瘍」などのメス特有の病気対策ができることや、欲求不満によるストレスや偽妊娠による身体的負担を減らすことにも繋がります。
避妊手術のデメリット
デメリット
- 肥満になりやすい
- 様々な病気になるリスクが高まる
卵巣や子宮を取り除くことで基礎代謝量が下がるものの、食欲が増すために肥満になりやすいです。
また、ホルモンバランスの崩壊による「尿失禁」や、「骨肉腫」や「血管肉腫」「甲状腺機能低下症」をはじめとした様々な病気のリスクが高まるといわれています。
犬の生理期間は、慎重に対処

発情前期から発情後期までの約20日間が気をつけたい期間です。発情後期が終わると、次の生理までは約4~6ヶ月の発情休止期という期間があります。
犬の生理は年に2回と回数は多くありませんが、気づかないうちに妊娠してしまう可能性がある散歩は特に注意が必要です。慎重に対処して、楽しいペットライフを過ごせるといいですね。
将来的に子犬を産む予定がない場合は、避妊手術を受けるメリットもあります。避妊手術によるホルモンバランスの悪化を原因として、病気にかかりやすくなるリスクもありますが、発情や生理による負担を感じている飼い主さんも少なく無いでしょう。犬の生理とともに、避妊手術についても調べてみてくださいね。