犬の脱臼、症状と原因を解説!考えられる病気と対処法は?

犬 病気27
愛玩動物看護師
監修者:渡邉鈴子

栃木県生まれ。帝京科学大学にて4年間、動物看護学をはじめとした動物関連の科目を学び、2023年5月には愛玩動物看護師免許を取得。これまでにうさぎや猫の飼育経験あり。現在では、ペット栄養管理士の資格取得に向けて勉強中。

愛犬が足を引きずったり、歩きにくそうにしていませんか?そうした場合、脱臼してしまっている可能性があります。

脱臼は進行状況によって症状が違いますが、歩行困難や痛みが現れる病気です。

早めに対処しなければ後遺症が残ってしまう場合もあるので、異変を感じたらすぐに獣医さんに相談しましょう。脱臼の原因には様々なものがありますが、事前に対応できる原因もありますのでしっかり対処してあげて下さい。

この記事では脱臼の症状や原因、対処法などについてまとめています。

犬の脱臼、どんな症状?

脱臼した犬の画像

脱臼時の症状

歩く際にスキップする
足を引きずる
立っている時に膝の関節がガクガクする
痛がって泣く

脱臼とは骨が本来の関節位置から外れてしまった状態をいい、脱臼する関節としては顎関節、肩関節、肘関節、膝関節、股関節などがあります。

最も多くみられるのは膝蓋骨脱臼

一番多く発症する部位は膝関節に分類される膝蓋骨で、膝蓋骨脱臼(パテラ)と呼ばれます。膝蓋骨とは、膝のお皿とよく呼ばれる部分です。膝蓋骨脱臼は先天性と後天性のものがあります。

内側に脱臼してしまう内方脱臼は、若齢の小型犬に多く、外側に脱臼してしまう外方脱臼は若齢の大型犬に多く発症します。

解剖学的に、特に小型犬が膝蓋骨脱臼を起こしやすいといわれています。

関節は本来2つの骨が筋肉と靭帯により繋がれた状態で構成されていますが、何らかの原因により片方の骨が本来の位置からずれてしまいます。2つの骨が完全にずれて接触面が一切ない状態を脱臼といい、部分的に接触している場合は亜脱臼と呼びます。

深刻な場合は足が動かせないなど、脱臼の度合いによって様々な症状が出ることから下記のようなグレードに合わせて重症度が判断されます。

脱臼の重症度

グレード1 最も軽度な状態で、症状がほとんど無く日常生活にも支障がない
グレード2 足を浮かせて歩いたりするが、足を伸ばしたりする事で元に戻るため大きく日常生活に支障がない
グレード3 足を引きずったりしゃがんだ姿勢で歩く
グレード4  脱臼したまま元に戻す事ができない

グレード2から手術を検討します。
放置してしまうと、骨が変形してしまい、膝を曲げた状態で歩いたり、まったく歩けないなどの症状が現れます。

後遺症となって残ってしまうこともあるので、早期に適切な処置をすることが大切です。少しでも脱臼が疑われる場合、すぐに獣医さんに相談しましょう。

犬の脱臼、原因は?

ベッドに入る犬の画像
脱臼の原因には、先天性のものと後天性のものとがあります。

先天性の原因としては生まれつきの関節のゆるみや変形などがあり、時間と共に進行してしまいます。後天性の原因としては強い衝撃や肥満などがあります。

1:先天性の関節形成異常

先天的な関節形成異常

骨軟骨形成
股関節形成不全

先天性の関節形成異常には、靭帯や筋肉のバランスが悪い、関節の溝が浅い、関節が変形しているなどがあります。

関節の形成に異常がある場合、脱臼しやすくなってしまいます。遺伝的な要因ですので親犬が脱臼しやすい犬の場合、子犬も脱臼しやすい可能性が高いとされています。

どちらも遺伝的に発症する病気で骨の形成に異常をもたらすため、外れやすい関節になってしまうことがあります。

親犬が先天性の関節形成異常を持っている犬の場合、注意が必要です。

2:強い衝撃

強い衝撃の例

フローリングなどの滑りやすい床
ソファーや階段でのジャンプ
過度な運動

後天性の脱臼は高い所からの着地や落下、交通事故、急な方向転換などにより関節に大きな力がかかった時に発症します。レース犬やアジリティ犬など激しい運動を要求される犬も関節に負担がかかりやすいとされています。

フローリングなどの滑りやすい床は、犬を踏ん張らせてしまい、脚への負担が大きくなってしまうため危険です。また、高いところへのジャンプ、飛び降りは関節への負担がとても大きいため、注意しておく必要があります。

ただ、適度な運動は関節周りの筋肉を発達させ脱臼対策にもなるので、愛犬には適度な運動をさせてあげましょう。

3:肥満

肥満になると足に必要以上の負担が常にかかっている状態となるため脱臼する原因となります。運動不足により筋肉量が低下する事で、脱臼する可能性が高くなってしまいます。

肥満・運動不足は脱臼の原因になりがちです。

犬の脱臼、発症しやすい犬種はいる?

ダックスフンド1

犬の脱臼には脱臼の種類によって発症しやすい犬種がいます。

顎関節脱臼

顎関節脱臼はバセットハウンド、ゴールデンレトリバー、アイリッシュセッター、ラブラドールレトリバー、バーニーズマウンテンドッグなど中型~大型犬に多く発症します。

遺伝的な理由で顎関節脱臼が発症しやすく、若い時期での発症が多くなっています。

肩関節脱臼

肩関節脱臼はトイプードルやシェットランドシープドッグなど小型犬に多く発症します。先天性の肩関節異常が多いため、肩関節脱臼を起こしやすくなっています。

肘関節脱臼

肘関節脱臼はヨークシャテリア、ミニチュアピンシャー、チワワなどに多く発症します。小型犬には先天的な肘関節異常が多いためです。

顎関節脱臼

顎関節脱臼は1歳未満の若い時期での発症が多く、肩関節脱臼は3~10ヶ月の早い年齢からの発症、肘関節脱臼は4~5ヶ月ほどからみられるようになります。

犬の脱臼、発症してしまった場合の対処は?

チワワ2

先天性の関節形成異常

先天性の関節形成異常による脱臼の場合、繰り返し発症することが多いため早い段階で手術などの対処が大切です。

軽度の症状でも手術は行えるので、できるだけ早く診察してもらうようにしてください。もし脱臼してしまった場合は、まずは獣医さんに相談しに行きます。

重症度のグレードや年齢、体重によって内科的処置をとるか、外科的処置をとるかが変わってきます。

重症度が低い場合は?

重症度のグレードが低かったり、麻酔処置のリスクが高い場合には内科的処置をとることが多くなります。その場合は、炎症を抑える薬や鎮痛剤、レーザーを利用して治療します。

重症度が高い場合は?

重症度のグレードが高い場合は手術を受けることになります。

先天性の関節形成異常を持っている犬の場合、発症しても飼い主さんが気付かないこともあるため定期的に獣医さんに診せることをおすすめします。

強い衝撃

強い衝撃により脱臼してしまった場合、犬自身が関節を伸ばしたりして元に戻す事が(整復)できる場合があります。そのためすぐに整復してしまい、症状に気づかない場合もあります。

癖になったり進行して症状が悪化する場合がありますので、異変に気づいたら獣医師に診察してもらってみてくださいね。

犬が脱臼してしまった場合、整復と固定の処置、炎症を抑える処置が必要になります。基本的には整復から全て獣医師に診てもらいましょう。

獣医師に診てもらうことができないなどの緊急の場合、脱臼が疑われる部位をできるだけ動かさないように安静にさせた状態にできるのが望ましいです。

また、手術をする場合には入院が必要になることがあります。退院後も経過観察で病院に通うことになるため、自宅からなるべく近い病院を探すことをおすすめします。

肥満

肥満により脱臼が起こる場合には、ダイエットを行うことが一番です。適正な食事量と適度な運動により少しずつ体重を減らすようにします。

体重が重いまま過度な運動を行うとケガや悪化の原因になりますので、適度な量を守るようにしてくださいね。

犬の脱臼、どんな検査が必要?

ブルドッグ3

脱臼の検査

触診
レントゲン検査

検査1:触診

脱臼の判断には触診が真っ先に行われます。筋肉の収縮、関節の捻髪音、関節の可動域などを調べ、グレード分けを行います。

検査2:レントゲン検査

レントゲン検査により骨格の変形程度を調べたり、骨関節炎の有無、他疾患の併発の有無などを調べる事ができます。症状が進行している場合に行われ、基本的には触診で十分とされています。

犬の脱臼、対策するには?

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脱臼の対策

健康管理
環境の整理
食事管理

犬の脱臼を対策するには健康管理と環境の整理、食事管理が大切です。

健康管理

適度な運動は犬の関節周りの筋肉をつけることができるためとても有効です。ただ、過度な運動をさせてしまうと逆に負担になってしまいます。犬の状態をみて適度に運動させてあげてくださいね。

環境の整理

また、フローリングのような滑りやすい床や階段などの段差は犬の足に負担をかけてしまいます。

犬が通るところに絨毯やマットを敷いてあげたり、なるべく段差を少なくしてあげるなど生活環境を見直すことも有効です。

食事管理

食事管理では肥満対策とグルコサミンやコンドロイチンなどの関節に良い栄養素が配合されたドッグフードを与えることが有効です。

筋肉をつけさせるためにも動物性タンパク質が摂れる、良質な肉を使ったドッグフードを与えることも大切です。

また、成長に合わせたドッグフード選びも重要で、ライフステージに合ったドッグフードを与えてカロリー調整を行いましょう。

関節に有効な栄養素

コンドロイチン
グルコサミン
コラーゲン
緑イ貝/p>

早い対処が治療の鍵!

犬 病気

脱臼は癖になりやすい病気ですので、早めに対処する事が大切です。進行してしまうと愛犬が痛い思いをする事になりますので、症状が軽いうちから診察してもらうようにします。足に負担をかけないようケアするのも重要です。

まずは運動管理や生活管理など、できることからしてみてはいかがでしょうか。

また、先天性の関節形成異常になりやすい犬種は定期的に獣医師に診察してもらうようにしてみてくださいね。

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