紀州犬は紀伊国、現在の和歌山県で生まれた日本犬で、1934年に秋田犬や甲斐犬に次いで天然記念物に指定された犬種です。
紀州半島を中心に飼われてきた犬種とオオカミの交配種を先祖に持ち、猟犬として活躍してきました。
この記事では、紀州犬の特徴、性格やしつけの方法といった飼い方のコツをまとめました。
目次
紀州犬の基本情報

歴史
紀州犬の歴史は古く、祖先は紀元前から日本にいた中型犬といわれています。
紀伊半島3県である和歌山、三重、奈良にまたがる山岳地帯で飼育されていた犬の中で、イノシシ猟に使うように品種固定されたのが紀州犬です。
「那智犬」「太地犬」「熊野犬」「奥吉野」と地域ごとに呼び名が異なりましたが、日本犬保存会に「紀州犬」として登録されて以来、まとめて「紀州犬」と名が付けられました。
大きさや体重
紀州犬は筋肉質でがっしりとした体型で発達した四肢を持ち、中型犬に分類されています。
大きさは、体長43~55cm、体重13~27kgほどに成長しますよ。
外見の特徴
「鼻筋の通った端正な顔立ち」「ピンと立った三角形の耳」「フサフサの巻尾」が特徴的な、日本犬のイメージぴったりの外見をしています。
頬にふんわりとしたやわらかいラインがあり、優しい雰囲気を醸し出していますよ。
被毛・被毛カラー
被毛はダブルコートで、95%が白毛、残りの5%が有色(胡麻、赤毛、虎毛、黒毛)です。
昔は75%程度有色の個体がいたそうですが、繁殖を繰り返す中で白い被毛の個体が大半を占めるようになりました。
白毛が95%を占める理由は?
「イノシシとの誤射を防ぐため」や「家庭犬として白い色が好まれた」など様々な説がありますが、繁殖によって白色の個体が増加したことから遺伝子上の理由が最も的確といえるかもしれません。
紀州犬の性格について
紀州犬の性格は、「強い忠誠心」「好奇心旺盛」「忍耐強い」などです。
気性が荒く凶暴と思われがちですが、信頼した飼い主に忠誠を誓い、主人やその家族に危険が迫ると命を懸けて守ろうとする勇敢な一面があります。
人懐っこさもあり、無駄吠えも少ないので家庭犬にも向いていますよ。
紀州犬の快適な飼育環境について

運動はどれくらい必要?
紀州犬はイノシシの狩猟犬としても活躍している犬種で、とても体力があります。存分に体を動かす時間を確保するためにも、1日2回それぞれ1時間程度の運動が必要です。
運動不足は過度のストレスになるため、無駄吠えや破壊行動などの問題行動に繋がることもあります。
ドッグランで思いっきり運動させてあげたり、自転車での引き運動をしたりするのもおすすめです。
一部自治体では危険犬種に指定
一部の自治体では、特定の犬種を人に危害を加える可能性があるとして「特定犬」として指定しています。
特定犬に指定されているのは、紀州犬をはじめ秋田犬やシェパード、ピットブル、ドーベルマンなど。特定犬を飼育する場合は自治体に申請、敷地内に脱走しないような柵や塀の設置、特定犬と書かれたシール(標識)の設置などをしなければいけません。
2015年千葉で紀州犬が人を危害を加える事件が起き射殺されたことがありますが、この紀州犬は劣悪な飼育環境で飼育されており飼い主さんのしつけが十分でなかったことが分かりました。
こんな悲しいことが起きないよう、特定犬に指定されている犬種だけでなく愛犬には十分なしつけと快適に暮らせる環境を提供することが必須です。
初心者には向かない犬種
人に危害を加える可能性があると指定されていることもある紀州犬。狩猟犬として活躍していることもあって、飼い主さんとその近しい人に対してのみ忠誠心を持っています。
飼い主さんとその近しい人以外には強い警戒心を持ち、攻撃的な一面を見せることがあります。
飼い主さんが紀州犬の行動をコントロールできるように、主従関係の構築と十分なしつけが必須です。特定犬の条例はしつけや管理の重要性を飼い主さんに意識させるためのものでもあるでしょう。
そのため、犬と暮らすのが初めての方、しつけに自信がない方など、初心者が紀州犬と暮らすのはおすすめできません。十分な経験と知識がなければ、お互いが快適に過ごせる環境は作れないでしょう。
紀州犬のお手入れについて

お手入れ項目
- 被毛ケア
- シャンプー
- 耳掃除
- 歯磨き
- 爪切り
紀州犬との生活をより良いものにするためには、日々の小まめなケアが欠かせません。
被毛ケア
被毛は短いですがアンダーコートが密生したダブルコートのため、換毛期は非常に抜け毛が多くなります。
念入りなブラッシングと定期的なシャンプーで、抜け毛対策と清潔な被毛をキープできるよう対策しましょう。
耳掃除
耳掃除は、耳が汚れているタイミングで行います。
「耳垢が増えた」などいつもと違う様子であれば、病院で診察を受けるようにしてくださいね。
歯磨き
定期的な歯磨きは口腔疾患のケアに繋がります。
指に巻いたガーゼで歯の表面に付着した汚れをふき取るようにします。
爪切り
血管を傷つけないように、爪の先端から少しずつ切るようにします。万が一の時のために止血剤も用意しておくといいですよ。
紀州犬の寿命・病気について

寿命
紀州犬の平均寿命は、およそ14年です。
健康な犬種として知られていますが、日本犬がかかりやすい皮膚や目の疾患には注意が必要です。日頃の定期検診を欠かさず受けることをおすすめします。
病気
気をつけたい病気
- アトピー性皮膚炎
- 緑内障
- 白内障
- 甲状腺機能低下症
- 心室中隔欠損
紀州犬のかかりやすい病気の中には、遺伝性のものもあれば日頃の生活習慣によって対策可能なものもあります。
紀州犬をしつけるときのコツは?

しつけの3つのコツ
- 叱るときは低い声で厳しく
- 上手にできたときは褒める
- 飼い主さんが先に行動する
紀州犬のしつけでは、飼い主がリーダーであるという関係性を理解してもらうことが大切です。
賢い犬種で理解力にも優れるので、しっかりとコミュニケーションを取りながら少しずつ関係性を築いてくださいね。
紀州犬の迎え入れについて

迎え入れにかかる費用
紀州犬の迎え入れにかかる費用は、およそ15万円です。
両親がチャンピオン血統の場合などは高くなる傾向がありますよ。
迎え入れ先
紀州犬の迎え入れ先は、「ブリーダー」「里親」などです。
ペットショップで販売されることはほとんどないので、日本犬保存会や紀州犬保存会などの犬種団体に問い合わせるのもおすすめ。
まとめ

この記事では、紀州犬の飼い方について紹介しました。
紀州犬はイノシシの狩猟犬として活躍していたり、攻撃的な一面をみせることもあることで一部自治体では危険な犬種として指定されています。
白くて可愛らしいルックスをしており飼いたい!と思う方もいらっしゃいますが、犬と暮らすのが初めての初心者におすすめできる犬種ではありません。
犬と一緒に暮らしたことがある経験者で、十分な知識がある方なら迎えいれるのを検討しても問題ないでしょう。