カクレクマノミの繁殖方法まとめ。産卵から稚魚の育て方まで

熱帯魚のカクレクマノミの繁殖には知識と道具が必要です。適切な知識と道具があれば、プロでなくとも繁殖を成功させられます。今回はカクレクマノミの繁殖法と稚魚の育て方をまとめました。

カクレクマノミを繁殖させるための環境づくり

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人間とは異なり、カクレクマノミに生来のオスやメスの分類は存在しません。成魚になった群れの中で最も大きい個体がメスとなり、2番めに大きな個体がオスとなります。そのため、群れの中で誕生するカップルは一組だけです。

この生態的特徴を踏まえた上で産卵しやすい環境を作るには、水槽で飼うカクレクマノミの数を限定する必要があります。どのみち同じ水槽では一組しかカップルが誕生しないので、水槽に入れるカクレクマノミは2匹が理想です。水槽内に2匹のカクレクマノミを入れておくと、やがてカップルになって、ライブロックや珊瑚岩、水槽のガラス面などに産卵します。初めての産卵のときは、イソギンチャクを入れておくと産卵しやすいといわれていますよ。

 

カクレクマノミの産卵から孵化まで

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カクレクマノミの卵は鮮やかなオレンジ色をしています。魚の中には親魚が産んだ卵を食べてしまう種も存在しますが、カクレクマノミの場合はその心配は無用です。産み付けられた卵はオスが世話をするので、孵化するまでは特別手間をかける必要もありません。卵は産卵から3日ほど経つと黒っぽい色に変色し、7〜10日程度で孵化します。ただ、孵化は周囲が暗くないと起こりません。産卵から7日以上が経過したら、卵が孵化しやすいように部屋を暗くしてあげてくださいね。

 

カクレクマノミの稚魚の飼育に必要な道具と知識

水槽

カクレクマノミの卵が孵化したら、稚魚を安全な環境に移してあげる必要があります。稚魚の飼育環境づくりは孵化の前に用意しておいてくださいね。稚魚を育てるには以下の道具がいります。カクレクマノミの稚魚を育てるために必要な道具をご紹介します。

稚魚を飼育する水槽(プラケース)

稚魚は広い水槽の中で餌を上手く見つけられないので、小さめの水槽で飼う必要があります。プラケースを利用する場合が多いですよ。

エアストーンとエアポンプ

稚魚用の水槽には、酸素を供給するエアポンプとエアストーンが必要です。極力水流が起きないように配慮して、運用するようにしてくださいね。

水槽保温用の大きな容器とヒーター

水槽の水温は一定に保つ必要があります。ただ、ヒーターを直接水槽に入れると水槽内全体の温度が安定しません。タライなどに水を張って水温を調節し、その中に稚魚の入った水槽を入れる必要があります。親のカクレクマノミが入っている水槽にプラケースを浮かべて飼育する場合などは必要ありません。

ゴミを取り除くためのスポイト

稚魚は水流で目を回して死んでしまうことが多いです。ゴミの除去はスポイトなどで慎重に行ってあげてくださいね。

稚魚の餌となるワムシ

稚魚の餌には、生き餌で小さなワムシ(ミツボシクロワムシ)が最適です。生後1週間以上程度成長したら、ワムシより少し大きいブライン幼生や乾燥餌も与えるようにして下さいね。

 

カクレクマノミの孵化後の飼育は?

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孵化したカクレクマノミの稚魚は、孵化した環境とは別のところで丁寧に育てる必要があります。今回はプラケースで飼育することを想定して飼育方法をご紹介します。カクレクマノミの卵が孵化して稚魚になったら、ライトを当てると寄ってくる習性を利用し、水槽内の水ごと別のプラケースですくって飼育を開始します。

生まれたばかりの稚魚は非常にデリケートです。飼育環境を移す際に水流の影響で死んでしまう稚魚も多いので、慎重に作業してくださいね。

孵化0日目〜3日目

孵化した直後の稚魚はヨークサックと呼ばれる栄養が蓄えられた袋を腹部につけています。ヨークサックの栄養分はおよそ3日でなくなってしまうため、その間に餌を食べることを覚える必要があります。この期間に与える餌はワムシがオススメです。孵化したてのカクレクマノミは視力が悪く、前方5mm程度しか見えていません。1日に2〜3回、水質の悪化に注意しながら、多めにワムシを与えてあげてください。

水槽内の掃除は1日2回が目安です。スポイトを使って丁寧にプラケースの底部のゴミを掃除します。減ってしまったプラケース内の水は、水流が起きないように注意しながら、元の水槽の水を補給してくださいね。

孵化4日目〜7日目

孵化4日目以降になると、稚魚の視力が向上し、ワムシの捕食がしやすくなります。この時期から乾燥餌も併せて与え始めると良いですよ。それ以外の基本的な飼育方針は孵化0日目〜3日目のときと同じです。食べ残しの乾燥餌は水質悪化が早まるので、こまめにプラケース内の掃除を行うことを忘れずに。

孵化8日目〜

孵化8日目を過ぎると、稚魚がやっとカクレクマノミのらしい見た目に変化する「変態期」に入ります。早い個体で6日目頃から、遅い個体で20日目頃までに見た目が変わりますよ。見た目が変化するのに伴い、変態期のカクレクマノミは大きなエネルギーが必要となります。変態期を乗り越えればグッと死亡率は減りますが、この時期に力尽きる個体も少なくありません。丁寧な飼育を心がけてくださいね。

餌はワムシとブライン幼生を中心に、乾燥餌も少し与えるようにしてください。
水槽内の水質管理としては、1日に2、3回の底部掃除と、1日に10%〜20%程度の水替えが必要です。

 

カクレクマノミの稚魚はデリケートで、少しの水流で目を回して死んでしまう可能性があります。何をするにも丁寧な飼育がポイントです。孵化から2ヶ月ほど生き延びた稚魚は、親と同じ感覚で飼えるようになります。初めての繁殖は大変ですが、飼育成功のカギを握るのは水温と水質の安定化です。常に水質と水温を一定に保つようにすれば、稚魚もすくすくと育ってくれますよ。